2008年03月02日

白 萩 (千鶴子)

初湯より  上がりきし児の  匂ひ立つ
すらすらと  春七草の  名の云へし
松過ぎて  取りかからねば  ならぬこと
ジーンズの  春七草を  刻みをり
白鷺の  翔びゆく空は  すでに春


囀りや  昔のままの  仁王門
ライラック  鞠追ふて来し  少女かな
幾つかの  星の名覚へ  春浅し
風花や  山門を入る  庭師たち
見舞客  辛夷咲けるを  告げて去る


牡丹に  刻の流れの  ゆるやかに
濃紅梅  この古壷に  良く似合ふ
玄関に  靴のつけ来し  春の泥
一つ傘  催ひてゆくや  春の雨
夕刊の  濡れて来にけり  春の雨

入園の  徽章眩しく  朝桜
花の下   かたまりてゆく   一年生
菜の花に   遠足の列   隠れけり
子の名呼び   夕餉つげいる   春夕焼
白鷺の   舞ふ空に  春 来ていたり



夫と来て   宝生の寺の   余花に逢ふ
中庭に   まだいる目白   日脚伸ぶ
拝殿の   階にも落花   及びをり
老鶯の   啼く間遠のき   暮れにけり
この車   降りて摘みたし   れんげ草

待春の   一軸を替へ   風鎮も
草染めの   エプロンおろし   春厨
春の風邪   素直に返事   して寝ぬる
春炬燵   ひとり気儘な   時も欲し
春雨を   拡げし傘に   ききながら

春の雪   てふときめきも   暫しなる
投函の   音のかそけき   春の雨
草萌えや   高く干しある   ユニホーム
童話集   拡げしままの   春炬燵
春風や   京より来たる   塗師たち
 
囀りや   伽藍の瓦   葺すすむ
春泥に   轍一すじ   残しおり
児の髪の   少し伸びたる   春炬燵
ケーキより   桜餅をと   所望さる
福梅と   いふ紅白の   葛湯煮て

春の風邪   違約を詫びて   受話器置く
母の忌に   供華に注ぎ足す  春の水
沈丁の  香りの道に  まだ成らず
うららかや  山門入りし  ジーンズの




石鹸の 泡の眩しき 五月かな
川波に 照る陽眩しく 夏は来ぬ
綾取りの 先を忘れし 蚊遣香
みどり児を 見に夏雲の 上を飛ぶ
山門の 扉きします 青嵐

夏障子 児は懸命に 腹這ひす
道連れを 待つ山門の 涼しさに
雨に咲く 浜木綿淡き 前住忌
パラソルを 忘れし軽き 悔のあり
夏萩や 一日一句といふ人も

緑陰に かへらぬ刻を 惜しみけり
法悦の 御堂涼しく 前住忌
稲妻が 山の稜線 映しをり
初咲きの 雨の浜木綿 いとしけれ
ねむり草 そっと眠らせ 見る夕べ

夏木立 児の風車 よく廻り
蝉取りの 竿高く行く 築地塀
玉虫に 顔寄せ合ひて いる児かな
涼風に 人訪ふ心 定まりぬ
山梔子の 捩れし 蕾のうすみどり



親の年  越へしと夫の  替衣
朝刊を  網殿の風に  ひらきけり
みどり児の  はや笑まひせる  夏の月
梅雨明けの  今宵は子等と  星を見ん
満ちて来し  潮の匂ひや  月見草


我が老を  垣間見し日の  蕗の雨
青嵐  白き吊輪の  揺れ通し
仰ぎ見て  樗の花と  気付くまで
山法師  白き胡蝶の  ように咲く
それぞれに  己が涼しき  場所を待つ

一瞬や  山門くぐる  初つばめ
蝶たたせ  暫し揺れいる  矢車草
一枚の  は璃戸に写る  青嵐
大花火  果てし虚ろな  空のあり
久々に  蚊帳の青さの  中にあり


みどり児の  重さをしかと  若葉風
緑陰や  孔雀の檻に  手話の人
露草は  幼馴染みの  帯の色
梅雨晴れや  堂の破風より  槌の音
朝がけの  庭の敷石  踏めば秋


古蚊帳を  折り目正しく  たたみけり
梅雨晴れや  ごみ収集の  オルゴール
夏の蝶  堂の甍の  高さまで
芋の葉に  転がる瑠璃の  玉一つ
旧道は  人の通わず  新樹光




菊まがき ランドセル背に 走り抜け
灯の奥に 碁石の音澄む 十三夜
夕づつや 星のまたたき すでに秋
一塊の 光る雲置き 時雨去る
リフトより 見る噴石に 秋の草

ポインセチア 炎の如く 店頭に
草の実を つけて負はれて 戻りけり
濡るる程 露を雫して 供華を剪る
蔦紅葉 明治の館を 華やかに
枯萩や 白壁に日の 移ろへる

茎の石 替えて二夜の 旅に出づ
箒目の 清らにありて 石蕗の花
こおろぎの まだいとけなき 薄みどり
裾野曳き 翼下に暫し 秋の富士
徐行して 銀杏落葉の 降るを見し

呼鈴に 弾む返事や 秋晴るる
這ひ這ひの 子に随いてゆく 小春縁
秋天に 城の石垣 仰ぎけり
乱れ積 てふ石垣を 秋天に
裏木戸を 押せば近道 草紅葉

 

花枇杷や 光りはじめたる 星一つ
方言の いともやさしき 十三夜
幼な児に 言葉また増え 実万両
聞きとめし より虫の音の 中にゐて
追伸に 返り咲きせし リラのこと

 落縁も  丹念に拭き  秋彼岸
古稀の秋  雲の流れに  来し方を
見覚えの  ある道に来て  曼珠沙華
白萩や  人深く住む  旧家あり
花枇杷や  朝の光りの  ある小径

くぐり門  より入り来し  秋の蝶
蜩や  午後の郵便  来し気配
篭に挿せば  秋草らしく  庫裏書院
敦盛を  舞ふ夾涼の  能舞台
後の月  碁盤の石の  つややかに

旅に来て  居待ち寝待ちの  月を見し
秋澄むや 
藩祖築ける  人口湖
平穏に  暮れて晩秋の  日なりけり
時雨るるや  古き銘ある  手水鉢
落葉せる  かそけき音を  ききにけり




冬すみれ  やさしき言葉  待つように
堂縁を  枯葉の駆ける  日々となる
外に出れば  かく蝋梅の  匂ひ立つ
遊んでは  呉れぬと  泣きにくる炬燵
田より田へ  かかる冬虹  くぐれとよ

街の音  遠くにありて  風邪籠り
炭砕く  報恩講の  朝厨
あるだけの  火鉢を出して  祖師の忌を
法座はて  火鉢散らばる  大広間
足音で  どの児とわかる  風邪籠り

背の子に  少し煙たき  焚火かな
流行も  知らず過ぎ来ぬ  枇杷の花
小春日に  米洗ひつつ 
童歌
膝の児に  歯の生えそめし  小春縁
鳴きやみて  冬鶯の  いとしけれ

雪を踏む  朝の敷石  さくさくと
紅梅に  逃げし目白の  暫しゐて
白壁に  二月の刻の  移りをり
寒雀  鋭き羽音  残し翔ぶ
冬鳥の  一点となる  速さかな




大ほだを  囲み普請場  賑やかに
お茶席は  琴の音になり  冬うらら
ポインセチア  置きて明るき  窓となる
我が膝に  来る児まだあり  日向ぼこ
白梅や  苔むす裏門  道が好き

時雨去り  苔美しき  裏参道
寒玉子  三つ四つ一気に  割りし音
ポストまで  風花に面  上げてゆく
かじかみし  児の手をひしと  挟みやる
新藁の  灰ふかぶかと  報恩講

音たてて  落ち葉の燃ゆる  祝祭日
ひびの頬して  利かぬ気の  三女なり
靄の濃き  朝にはじまる  四温かな   
畑隅に  何やら小さき  冬構
パレットを  冬青草に  置きしまま
 

きしませて  急ぎ帯巻く  今朝の雪
蝋梅の  落葉ばかりの  朝ありき
小いも煮る  らしき時雨の  夕厨
宴果てし  回転ドアの  外は雪
年の瀬に  都忘れの  苗を買う

松過ぎて  姉妹会の  なごやかに
四つの子と  白雪姫を  読み初めに
初釜に  侍りて  心足らひけり
春寒むに  ほのと温もり  ある湯呑み
さはあれど  空の量感  日々に春



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ネット社会、その光と闇を追うー
http://aramahosi.cocolog-nifty.com/

posted by asaborake at 00:37| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 俳句 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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