2008年05月06日

白 萩 ( 冬 )

蝋梅

千鶴子

冬すみれ  やさしき言葉  待つように
堂縁を  枯葉の駆ける  日々となる
外に出れば  かく蝋梅の  匂ひ立つ
遊んでは  呉れぬと  泣きにくる炬燵
田より田へ  かかる冬虹  くぐれとよ

街の音  遠くにありて  風邪籠り
炭砕く  報恩講の  朝厨
あるだけの  火鉢を出して  祖師の忌を
法座はて  火鉢散らばる  大広間
足音で  どの児とわかる  風邪籠り

背の子に  少し煙たき  焚火かな
流行も  知らず過ぎ来ぬ  枇杷の花
小春日に  米洗ひつつ 
童歌
膝の児に  歯の生えそめし  小春縁
鳴きやみて  冬鶯の  いとしけれ

目白

雪を踏む  朝の敷石  さくさくと
紅梅に  逃げし目白の  暫しゐて
白壁に  二月の刻の  移りをり
寒雀  鋭き羽音  残し翔ぶ
冬鳥の  一点となる  速さかな


大ほだを  囲み普請場  賑やかに
お茶席は  琴の音になり  冬うらら
ポインセチア  置きて明るき  窓となる
我が膝に  来る児まだあり  日向ぼこ
白梅や  苔むす裏門  道が好き

時雨去り  苔美しき  裏参道
寒玉子  三つ四つ一気に  割りし音
ポストまで  風花に面  上げてゆく
かじかみし  児の手をひしと  挟みやる
新藁の  灰ふかぶかと  報恩講

雪

音たてて  落ち葉の燃ゆる  祝祭日
ひびの頬して  利かぬ気の  三女なり
靄の濃き  朝にはじまる  四温かな   
畑隅に  何やら小さき  冬構
パレットを  冬青草に  置きしまま
 

きしませて  急ぎ帯巻く  今朝の雪
蝋梅の  落葉ばかりの  朝ありき
小いも煮る  らしき時雨の  夕厨
宴果てし  回転ドアの  外は雪
年の瀬に  都忘れの  苗を買う

松過ぎて  姉妹会の  なごやかに
四つの子と  白雪姫を  読み初めに
初釜に  侍りて  心足らひけり
春寒むに  ほのと温もり  ある湯呑み
さはあれど  空の量感  日々に春




岑  子

警戒の  ひと声鳴ける  見張鶴
つぎつぎに  降りたつ鶴の  屯せる
まだき夜に  鶴見る人の  二三人
はるかなる  山裾翔べる  塒鶴    *塒‥ねぐら
初冬の  紙漉村に  来てゐたり

座敷より  見る冬山の  濃く淡く
冬雲や  朝市に人  群れいたる
探梅の  足とどめたる  獣魂碑
立冬の  風吹き抜ける  関所址
冬の川  家毎にある  水汲場

はつ冬の  高尾の山の  杉明り
にお浮ぶ  落日の湖  きらめきて
芽牡丹に  雨後の陽光  やわらげる
鯉の瞳を  やさしと思ふ  冬日中
一羽ふえ  一羽もぐれる  かいつぶり

落日

大榾の  終日燃えて  暮るるなり
榾明り  寺に二人の  童女ゐて
内陣の  閼伽ことごとく  薄氷へり
くぐもりて  冬の鳩鳴く  寺の屋根
大屋根の  し尾にとまれる  寒鴉

句座よりの  玻璃越しの  山眠りをり
風邪声を  いたわりあへる  夜の電話
画展出て  雪の螺旋階段  まぶし
句帳手に  人につきゆく  寒日和
紅梅の  鉢ひとつある  投票所

冬晴れや  声出して読む  帰去来碑
枇杷咲いて  ふっと遠き日  たぐりよせ
病名は触れず  寒夜の  受話器置く
何思ひゐて  つまづきし  枯木径
冬菊の  たれにともなく  匂ひけり

冬の川

雪しまくなか  顔あげて  武者埴輪
山を越え  又残雪の  山に入る
推敲の  刻すごしけり  冬灯
冬の川  隔て二つの  小学校
旧道の  一樹花芽の  疎に密に

まさぐれる  百万遍の  念珠冷ゆ
道路鏡  雪雫して  暮色来る
一言に  なほこだわるや  冬木の芽
並べある  素陶の乾く  冬日和
末枯や  綾の鼓の  碑の辺り

終電の  夜寒の椅子の  空いてをり
ビルの窓より  残照の  冬の海
散薬の  苦さ残れる  夜寒かな
山中に  唐臼響く  十二月
街頭に  署名乞はれし  十二月
 

エッセー集 http://bunmei.seesaa.net/
ネット社会、その光と闇を追うー
http://aramahosi.cocolog-nifty.com/
 
posted by asaborake at 18:43| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 俳句 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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