2008年05月21日

白 萩 ( 夏 )

夏雲

千鶴子

石鹸の 泡の眩しき 五月かな
川波に 照る陽眩しく 夏は来ぬ
綾取りの 先を忘れし 蚊遣香
みどり児を 見に夏雲の 上を飛ぶ
山門の 扉きします 青嵐

夏障子 児は懸命に 腹這ひす
道連れを 待つ山門の 涼しさに
雨に咲く 浜木綿淡き 前住忌
パラソルを 忘れし軽き 悔のあり
夏萩や 一日一句といふ人も

緑陰に かへらぬ刻を 惜しみけり
法悦の 御堂涼しく 前住忌
稲妻が 山の稜線 映しをり
初咲きの 雨の浜木綿 いとしけれ
ねむり草 そっと眠らせ 見る夕べ

蝉

夏木立 児の風車 よく廻り
蝉取りの 竿高く行く 築地塀
玉虫に 顔寄せ合ひて いる児かな
涼風に 人訪ふ心 定まりぬ
山梔子の 捩れし 蕾のうすみどり

親の年  越へしと夫の  替衣
朝刊を  網殿の風に  ひらきけり
みどり児の  はや笑まひせる  夏の月
梅雨明けの  今宵は子等と  星を見ん
満ちて来し  潮の匂ひや  月見草

我が老を  垣間見し日の  蕗の雨
青嵐  白き吊輪の  揺れ通し
仰ぎ見て  樗の花と  気付くまで
山法師  白き胡蝶の  ように咲く
それぞれに  己が涼しき  場所を待つ

花火

一瞬や  山門くぐる  初つばめ
蝶たたせ  暫し揺れいる  矢車草
一枚の  は璃戸に写る  青嵐
大花火  果てし虚ろな  空のあり
久々に  蚊帳の青さの  中にあり

みどり児の  重さをしかと  若葉風
緑陰や  孔雀の檻に  手話の人
露草は  幼馴染みの  帯の色
梅雨晴れや  堂の破風より  槌の音
朝がけの  庭の敷石  踏めば秋


古蚊帳を  折り目正しく  たたみけり
梅雨晴れや  ごみ収集の  オルゴール
夏の蝶  堂の甍の  高さまで
芋の葉に  転がる瑠璃の  玉一つ
旧道は  人の通わず  新樹光





岑  子

緑立つ  湖畔をめぐる  ななかまど
北の旅  リラ冷えという  雨に逢ふ
渓流の  音滔々と  薯がの花
豊後より  肥後路へ新樹  かさねゆく
手庇や  鵯の抱卵  つづきをり

中空の  まぶしさに立つ  五月富士
アルプスを  仰ぐ青田の  雲ゆるる
風のなき  日も揺れてをり  今年竹
浜木綿の  咲くや寺領の  女ごえ
夏雲や  虚子の句碑立つ  山の池

血縁に  会ふときめきや  明易し
明易き  枕辺に置く  旅の地図
青葉闇  親鸞の像  濡れ色に
思い出は  母につながる  白露の日
並び買ふ  故里展の  水豆腐

五月富士

高階の  窓より梅雨の  児童館
つくばひの  水飲み来し  梅雨の猫
青梅雨の  街延々と  渋滞す
点す灯に  小糠の雨の  ひかりをり
供華とせり  青き鬼火  母の忌に

風鈴の  二つの音色  隣家より
海光の  外人官舎  枇杷熟るる
花みかん  匂う山路の  休み窯
百日紅  百日白の  こぼれ花
熟睡子の  遊び疲れし  日焼け顔

蜜柑咲く  島に古りたり  クルス墓
菖蒲田を  巡り一花の  白に佇つ
菖蒲咲く  水路を舟の  下りゆく
渓流の  飛沫に夏蝶  見失ふ
文殊橋  越え滝道を  急ぎけり

鬼百合

蒙古塚  覆ふ大樹の  蝉しぐれ
鬼百合の  花粉こぼせし  朝の卓
襲名の  朱印あざやかなる  扇
アルバムの  父若かりき  夏帽子
幾曲がり  青嶺越えし  札所寺

たれかれに  会ふ故里の  盆三日
はにかめる  踊浴衣の  あねいもと
軒並みに  水打ってあり  宵の市
父の忌に  つづく母の忌  百合明り
初蝉や  はらから集う  寺座敷

水替えて  金魚の尾びれ  よく動く
さみどりの  早苗なびける  学習田
縄文の  遺構めぐりし  日の盛り
金魚飼ふ  十一階の  ベランダに
晩夏光  法衣干さるる  風の色




エッセー集 http://bunmei.seesaa.net/
ネット社会、その光と闇を追うー
http://aramahosi.cocolog-nifty.com/

 
posted by asaborake at 22:38| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 俳句 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。